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カプサイシン(Capsaicin)とは、トウガラシの辛味成分である。
- C18H27NO3 - ゲーム『SOUND VOLTEX』収録の楽曲。当該記事参照。
概要
カプサイシンは、トウガラシ属植物の果実に含まれるアルカロイドであり、バニリルアミンと8-メチル-6-ノネン酸がアミド結合したカプサイシノイドである。トウガラシの辛味成分には、カプサイシンと同程度の辛味をもつジヒドロカプサイシンや、半分程度の辛味をもつノルジヒドロカプサイシンもある。これらのカプサイシノイドは、トウガラシ果実の隔壁(果実内部のしきりのような部分)と胎座(へた近くのわたの部分)に多く含まれる。なお、“Capsaicin”の名は、トウガラシ属植物の学名Capsicumに由来する。
カプサイシンなどのカプサイシノイドはバニリル基を有しており、バニロイドに分類される。カプサイシノイドは感覚神経終末にあるバニロイド受容体TRPV1を活性化させ、灼熱感(辛味や疼痛)を惹起する。一方で、TRPV1は断続的に刺激されると反応の鈍化(脱感作)を起こすため、逆に鎮痛作用も示す。
カプサイシンによる灼熱感は実際に温度が上昇するわけではないものの血行を促進するため、温シップに応用されている。カプサイシン軟膏という院内製剤(製薬企業によって製造販売されていないため病院内で調製される製剤)もあり、帯状疱疹後神経痛や慢性掻痒症の治療に用いられる(適用外使用)。日本薬局方にはエタノールでカプサイシンを抽出したトウガラシチンキが収載されており、筋肉痛、凍瘡(しもやけ)、I度の凍傷(表皮のみの損傷)、さらには育毛にも活用されている。ただし、カプサイシンは強い刺激を伴うため、肌が敏感な方の使用には注意を要する。
トウガラシの辛さは、スコヴィル値(SHU)で表される。たとえば、一般的なトウガラシのスコヴィル値は50,000
SHU | 果実 | 備考 |
---|---|---|
2,693,000 | ペッパーX | 2023年 ギネス世界記録認定 |
2,480,000 | ドラゴンズ・ブレス | |
2,200,000 | キャロライナ・リーパー | 2013年 ギネス世界記録認定 |
2,009,231 | トリニダード・モルガ・スコーピオン | 2012年 ギネス世界記録認定 |
1,463,700 | トリニダード・スコーピオン・ブッチ・テイラー | 2011年 ギネス世界記録認定 ※短期間で記録が更新された |
1,382,118 | ナーガ・ヴァイパー | |
1,067,286 | インフィニティ・チリ | |
1,001,304 | ブート・ジョロキア | 2007年 ギネス世界記録認定 |
577,000 | レッド・サヴィナ | 1994年 ギネス世界記録認定 |
100,000 - |
ハバネロ | |
30,000 - |
カイエンペッパー | 一般的なトウガラシの辛さ |
4,000 - |
ハラペーニョ | |
0 | ピーマン |
トウガラシに含有されるカプサイシノイドの内訳は、カプサイシンが約60~70%、ジヒドロカプサイシンが約20~30%、ノルジヒドロカプサイシンが約5~10%を占めるほか、わずかにホモカプサイシンなども含まれる。いずれも、バニロイド受容体TRPV1を活性化するTRPV1アゴニストであるが、辛味の強さや風味に違いがある。
コショウやショウガの辛味成分もTRPV1アゴニストであり、スコヴィル値で辛さを測定できる。以下に、代表的なTRPV1アゴニストのスコヴィル値を参考までに掲載する。ちなみに、ワサビやニンニクの辛味成分はTRPV1ではなくTRPA1という別の受容体を活性化するTRPA1アゴニストであるため、辛味をもたらすメカニズムが異なり、辛味の強さをスコヴィル値で評価できない。
SHU | 物質 | 備考 |
---|---|---|
16,000,000, |
レシニフェラ |
トウダイグサ属植物に含まれる毒 |
5,300,000, |
チニア |
|
16,000,000 | カプサイシン | トウガラシに含まれる辛味成分 (カプサイシノイド) |
15,000,000 | ジヒドロ |
|
9,100,000 | ノルジヒドロ |
|
8,600,000 | ホモジヒドロ |
|
8,600,000 | ホモ |
|
160,000 | ショウガオール | 乾燥したショウガに含まれる辛味成分 |
150,000 | ピペリン | コショウに含まれる辛味成分 |
60,000 | ギンゲオール | 生のショウガに含まれる辛味成分 |
関連動画
関連リンク
- カプサイシンに関する詳細情報 - 農林水産省
- TRPチャネルと痛み(日本薬理学雑誌 第127巻 第3号) - J-STAGE
- Positional differences of intronic transposons in pAMT affect the pungency level in chili pepper through altered splicing efficiency - PubMed
- トウガラシの辛味の程度に影響を及ぼすpAMTの変異に関する京都大学・岡山大学・城西大学の共同研究。
関連項目
- 化学
- 医学 / 薬学
- 医薬品
- トウガラシ
- タバスコ
- ラー油
- デスソース
- キムチ
- 辛ラーメン
- ペヤングやきそば激辛MAX END / ペヤング 獄激辛やきそばFinal
- カラムーチョ
- 暴君ハバネロ
- カプサイジ / スコヴィラン - カプサイシンとスコヴィル値が名前の由来。
- ノーベル生理学・医学賞(2021年)
- メントール - カプサイシンとは逆に冷感刺激を与える物質。
- アルカロイド
- 化合物の一覧
- 医学記事一覧
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