アーマードコアとは、フロム・ソフトウェアが製作している戦闘メカアクションゲームシリーズ、及びそれらに登場する機動兵器の名称である。
アーマードコア (シリーズ)
機体のパーツの自由な組み換えによって自分だけの多彩な戦闘メカを操作することができるロボットアクションゲーム。
シリーズとしての歴史はプレイステーション初期の1997年から始まり、10年ほどの沈黙期を挟んで2022年の7月10日で生誕25周年を迎えた。据え置き機では『アーマード・コアⅥ ファイアーズ・オブ・ルビコン』で16作目を数え、単一のメカアクションゲームシリーズとしては異例の長期展開シリーズになっている。
メーカーのサイトなどでも確認できる通り、本来は「アーマード・コア」と表記すべきなのだが、中黒が無い状態で表記されることが多い。
各作品の世界観はAC・ACPP・ACMOA(初代系)、AC2・AC2AA(2系)、AC3・AC3SL(3系)、ACNX・ACNB・ACLR(N系)、AC4・ACfA(4系)、ACV・ACVD(V系)、ACⅥ(Ⅵ系)といった感じで纏められている。ACFFはN系の番外編扱い。
系列ごとに世界観や基本システム、操作フィーリングが変更されるが、全体的に難易度は高め。系統の前作品のプレイデータ(所持金・保有パーツ)を次回作にコンバートできるのも恒例である。初心者は各系列の第一作、特に以下の作品から入ることをおススメしたい。
- 初代 - 救済措置あり。PS Plus版ではハードウェア側の巻き戻し機能やクイックセーブにも対応
- 2 - 救済措置あり。ストーリーが王道ロボット物でわかりやすい
- 3 - ゲーム自体の完成度が高く、難易度が全体的に低め
- 4 - 初期機体選択によって救済装備が使用可能。続編のACfAと密接にかかわるストーリーが高評価
- Ⅵ - ユーザビリティを大幅に改善。ゲーム自体も非常に高い完成度を誇るが、良くも悪くも過去作とは操作性が激変しているのでその点は注意
もともと難易度が高いシリーズなので、アクションゲームが苦手な人は最初に触れる作品を慎重に選ばなければ、投げ出す原因になりやすい。アナザーエイジやラストレイヴンなどは間違っても選ばないように。
現状最大の問題は、PC版が展開されておらず、Xboxの後方互換機能にも対応していない、2~VDまでの作品を遊ぶ手段が限られてしまっていることだろう。初代系3部作はPlaystation Networkのゲームアーカイブスや、PS Plusで購入可能なのだが……。
アーマードコア(ゲーム)
フロム・ソフトウェアがキングスフィールドシリーズで培ったプレイステーションでの製作ノウハウをフルに投じて製作されたのが第一作目にあたる。
特に初代は、プレイステーションという限られた制約の中、複数のステータスを考慮しながらパーツ単位で改造してゆくという、「ロボット構築シミュレーション」という性質と、ステータスが正しく反映されたロボットがスピーディに動く完成度の高い「3Dロボットゲーム」という性質の両方を内包しており、くわえて、豊富かつ充実したミッションや有名声優の起用など、一流の大ボリューム作品として、アーマード・コアが知られるきっかけを作った。
アクション面は独特で、画面に表示された四角形のサイトの中に敵を捉え続けることで敵をロックオンし、その間に偏差射撃を自動で行ってくれるという、FPS的な操作「サイティング」が用いられている。このサイティングを続けるために敵を追いかけながら、ブースト移動による敵弾の回避・位置取り、ブースト移動に伴うエネルギー消費量と残量の管理、状況毎の武器の扱い分けの判断などを同時に行う。
また、ACを自分独自のものに仕上げるためのアセンブル(カスタマイズ)も外装4項目、内装3~6項目、武装4~6項目という多くのカスタマイズ部分が存在し、それらが持つ各10項目近い大量のステータス情報の兼ね合いを見つつ構築するという必要もある。
以上が本作のアクションと特色である。それゆえに、アクション面、アセンブル面の両方とも知識・慣れが必要な、いわゆる「上級者向け」ゲームである。しかし、一貫して「上級者向けのままに作られた」シリーズはなく、その点が独自性という意味で光っているといえる。メカの構築や操作の癖を掴み、ゲームに馴染んだ時の「自分が作ったロボットで戦場を駆け巡る」楽しさや奥深さは本物であり、幾多のコアなプレイヤーを虜にしてきた。
各作品は、世界観や時系列に差異はあるものの、どのシリーズも「国家という枠組が排除され企業の支配している世界」が舞台となっている。そしてプレーヤーは、企業の“汚れ仕事”を請け負う傭兵でありアーマード・コアというロボットを駆る専門職(レイヴン、リンクス)として、ゲームを進めてゆく。
それゆえに、愛機となるACの修理費・弾薬費はプレーヤー持ちで報酬から天引きされる形となる。よってミッションはあえて高価な装備を使わないという戦略が発生する“傭兵シミュレーション”という性質も存在している。
ストーリー性、シナリオなどは希薄なもので、(一部作品を除いて)プレーヤーは、メール・ニュース等から得られる世界情勢を傭兵という立場で傍観するいわば“歴史伝記”的な進行の仕方をする。
そして、キャラクターは数多く登場するものの、それらは全て通信における音声だけであり決して外見などは設定されていない。特にプレイヤーに関しては一切の個性が排除されており、様々なロールプレイを可能にしている。
二次創作、ことニコニコ動画ではMADが硬派な作品柄に反して非常に多い点もそのプレイヤーの想像に委ねられる部分が多いという性質が要因となっているといえる。
アーマードコア (兵器)
大まかに分けて
ここでは主に1.について記述する。
初代~ACLRのAC
AC(Armored Core)とは、本来作業用であったMT(Muscle Tracer)と呼ばれるロボットから発展した兵器である。「コア」と呼ばれる胴体パーツを中心に、様々なパーツを接続・換装可能にして汎用性を持たせ、それを戦闘用に特化させた機動兵器の総称である。高さは人間型の二脚でおおよそ10m前後とされる。
構造としては、人型の上半身に、二脚、四脚、逆関節、車両、フロートのいずれかの脚部を接続したものを基本フレームとし、ジェネレータ、ラジエータ、FCS、ブースタといった内装、加えて背部、肩部、両腕部に武装を装着する。結果として、従来の兵器と比較し高い三次元機動性能を持ち、状況に応じ多様に変更可能な機体システムを有する、圧倒的な汎用性を持った兵器となった。
作中では事実上最も強い兵器とされており、AC一機による戦力効果は計り知れない。もっとも、あくまで汎用性や戦術的側面から見た場合での『最強』であるので、MTや戦車などでも撃破自体はできるし、局地戦用のより強力な兵器なども存在している。ゲーム中では「数の暴力で攻めてくるMTやガードメカ部隊」や「特殊大型兵器」に苦戦したプレイヤーも多いことだろう。
現代兵器と比較してACを考察している動画も存在するので、興味があれば視聴してみると面白いだろう。→こちら
V系のAC
高さが明確に7m級として設定され、同時にネクストACのスーパーロボット風味から、よりミリタリーチックなデザインワークスへ大幅に転換した。どことなく『装甲騎兵ボトムズ』のアーマードトルーパーを彷彿とさせる。
「かつての戦争で使われていた普及兵器の発掘・再生品」とされ、V時代の技術では新造できなかった。数世代が経過したVDでは複製品の安定供給が可能となり、新設計パーツも登場している。
背部に搭載したまま使用する武装システムは廃止され、ハンガーラック機能が導入。両腕に2つ、両背に2つの武装を搭載し、状況に応じて腕・背で持ち替える方式となった。更に通常のAC規格を無視して設計された特殊武装「オーバード・ウェポン」も用意されている。
Ⅵ系のAC
断片的な情報を繋ぎ合わせると、Ⅵ系のACは「人類が全宇宙規模に生存圏を広げた世界における、汎用性と対応力に特化した多目的機械」として扱われている節がある。良くも悪くも旧来作の「特別な兵器」感は無くなっている。
単体性能ではACを超える、パーツ換装機能を持たないパッケージング機体も数多く運用されている(それらのパイロットはACを「寄せ集め」と評する)ばかりか、有象無象のパイロットではその辺のMTにすら苦戦するのもザラらしい。しかし、手練れのパイロットが操れば獅子奮迅の活躍も不可能ではなく、そのポテンシャル自体は高い。
旧来作よりも「人体の発展・延長」を重視した設計理論が広まっているらしく、AC操縦に人体を最適化させる「強化人間」技術も広く普及している。ゲームシステム的にも、これまでの「メカ操縦ライク」から「人間キャラを操作している」ような直感的挙動に変更されている。
ニコニコ動画におけるアーマードコア
プレイ動画・実況プレイ動画においては他のゲームタイトルと比較しても遜色ない充実ぶりである。
もともと、自由に機体が組めるゲーム性から、工夫次第で非常に多くのプレイスタイルを楽しめるゲームであるため、特定のパーツのみ使用するなどの縛りプレイや、ネタ機体(戦闘における性能を度外視した個性的な外見を持つ機体)でのお遊びプレイなどバリエーションに富む。
もちろん上級者によるやり込み動画や対戦プレイ動画も多数存在する。
プレイしてみようかと考えている方は、前述のとおり、それなり以上の難易度(更に取説が不十分というのもおなじみ)なので、wikiやニコニコ動画で操作面・アセンブル知識の予習をしておくことをお勧めする。
下記はレイヴンを対象にした動画。4以後の作品は『リンクス養成動画』タグを追って検索するとよいだろう。
なお、ニコニコ動画内でのアーマードコアの長編シリーズプレイ動画の元祖はこの「なんとなく最初からアーマードコア3」だと思われる。
プレイ動画を探す場合、シリーズのナンバリング(2ならアーマードコア2・AC2)やサブタイトル(ラストレイヴンの場合はラストレイヴン又はLR)でタグ検索し、マイリストを辿っていくのがおすすめ。
遊び方は人それぞれ。特にパーツ・カラーリングの充実した4系列で、他版権作品の再現機紹介動画が人気を得ている。
また、ロボットゲームというジャンルとしては異質と言えるほどMAD動画の数も多い。
基本的にはムービーシーンの繋ぎ合わせに作者が選んだ曲を合わせるという方式が通例となっている。
豊富な台詞音源を使った音声MADや、ニコニコ動画特有の手描きMADなど、ネタ系ジャンルも多く見受けられる。
プラモデル展開
コトブキヤより、1/72スケールのプラモデルシリーズV.I.(ヴァリアブル・インフィニティ)として発売されている。
キットはパーツ単位での組み換えが可能なのが特徴で、パーツが揃えばゲーム内での愛機を再現することも可能である。元デザインの複雑で細かいディティールを再現するために非常に細かくパーツ分けされており、そのため説明書どおりに組むだけでも色分けなどはかなりのもの(ただし武器は除く)。
反面、その細かさゆえにパーツの紛失、破損が起こりやすい。尖っているパーツは容赦なく尖っているため、時にはプラモではなく人間の方が破損することもある。
これらのことから、ガンプラに比べると組み立て難度がやや高く、スナップフィットではあるが一部のパーツには接着剤の使用が推奨される。とはいえ、基本的にはガンプラのMGクラスとそう大差はないので、興味があるなら尻込みせずに何か一つ組んでみることをオススメしたい。
小説・コミカライズ
篠崎砂美2部作
『お隣の魔法使い』や『ファイアーエムブレム トラキア776』ノベライズを手がけた篠崎砂美の筆によるファミ通文庫ライトノベル版が刊行されている。
第1作『アーマード・コア ~ザ・フェイク・イリュージョンズ~』では、初代ACのエンディングから1年後を舞台に、レイヴンズ・ネストの統制を離れたレイヴン達の戦いをオリジナルストーリーで描く。第2作『アーマード・コア ~マスターオブアリーナ~』ではACMoA本編にほぼ準じたノベライズになっている。篠崎氏曰くもう1冊が刊行され3部作になる予定だったそうだが、実現しなかった。
篠崎氏は実際にゲームをプレイし、登場ACは大体ゲーム中で再現可能な範囲に調整されている。中々評判の高いノベライズ版ではあるが、現在絶版のため入手困難。
FORT TOWER SONG
後述の未発売OVA『FORT TOWER SONG』のノベライズ版。2007年に富士見ファンタジア文庫から発刊された。筆者はOVAの脚本を担当するはずだった和智正喜。
企業を母体とした「フェルトリカ」と「テキスタン」が戦争を続ける世界。フェルトリカ軍はテキスタンの要衝・都市パスカに聳える旧時代戦略兵器「タワー」の強襲を試みるが、ACパイロットのスパローただ一人を残して部隊は壊滅する。スパローはたまたま見つけた死体──「タワー」管理職員・ソフィに成りすまし、パスカに潜入してタワー破壊任務を完遂しようとするのだが……。
人間ドラマに主観を置いた作品であり、ACの出番はあまり多くない。当時のゲームでは「最強の機動兵器」扱いだったACが、『AC4』以降のノーマルACのような普通の軍用兵器として演出されていることもあり、発刊当時の評価はあまり高くなかった。『TOWER CITY BLADE』共々企画が順調に続いていれば、あるいは「もう一つのAC」として知られることもあったのかもしれない。
TOWER CITY BLADE
月刊ドラゴンエイジ2007年2月号から6月号で連載された、AC初のコミカライズ作品。単行本全一巻。作画は氷樹一世。監修・協力としてフロム・ソフトウェアの後藤広幸がクレジットされている。ACパーツのデザインこそ『AC3』~『ACLR』のものと同一だが、世界観は『FORT TOWER SONG』と共有している(ことが作中描写から読み取れる)。
フェルトリカ軍にレイヴンの父を殺された少女・橘花は、かたき討ちのためにレイヴンとなり、傭兵組織『フライトネスト』への参加を志願する。しかしまだまだ半人前の彼女は、腕前を証明するためにアリーナバトルへの参加を命じられるのだった……。
当時まだまだ硬派な連中が多かったACコミュニティでは、ボクっ子巨乳の橘花を始めとした設定が「安易な萌え路線化」と判断され、発表時から白眼視されていた。更にいざ連載が始まるとメカの作画が大変残念なことになっており、加えて『FORT TOWER SONG』の企画が頓挫した(後述)ことも相まってか、作品自体が打ち切られてしまう。氷樹氏のブログコメント欄は盛大に炎上し、AC史上最大の黒歴史作品として記憶されることになってしまった。
氷樹氏を擁護しておくと、氏は元々美少女絵師であり、メカ作画は決して本領ではなかった。にも関わらずフロム側から一切の作画資料は提供されず、氏は自分でゲーム画面をキャプチャしてメカデザインを研究せざるを得ず(単行本あとがきより)、結果として本編はあんな絵になってしまった、という事情がある。作画への丸投げ、ゴタゴタな企画展開など、適当過ぎたフロム側にも問題があったのである(もちろん、過剰反応して叩いたプレイヤー側にも)。
なお、氷樹氏はその後に『えむえむっ!』『精霊使いの剣舞』『異世界迷宮でハーレムを』などのコミカライズ作品で長期連載を果たしている。
映像作品
FORT TOWER SONG
シリーズ10作目(FF除く)『ラストレイヴン』発売から一年後、2006年にOVA『ARMORED CORE FORT TOWER SONG』が発表された。
監督に静野孔文、メカデザインに石垣純哉(『Vガンダム』『リューナイト』等)とニトロプラスを迎え……アニメ版デモンベインの不出来さがネタとなるVIEWWORKSが制作を担当するはずだったが、その後音沙汰がなくなり、VIEWWORKSの倒産によって事実上頓挫した。
ACコミュニティでは「フロムが資金を持ち逃げ倒産された」という根も葉もない噂が飛び交うことになった。
アセット・マネジメント
2024年、Amazonプライム作品として、複数のゲームを原作として描かれる15の短編集『シークレット・レベル』が配信された。その内のエピソード8は「AC」をベースにした14分間のCGアニメーション『アーマード・コア ~アセット・マネジメント~』である。高品質のCGムービーに加え、主人公のACパイロットとしてサイバーパンクの雄・キアヌ・リーヴスが主演する気合の入った内容になっている。
どことも知れぬ寒冷地帯。「強化人間」の最後の生き残りと呼ばれる主人公は、愛機の2脚AC「シュリーカー」を駆り山中の秘密基地を目指す。迎撃に出てきた所属不明のACとの戦いを経て、彼が手にするモノとは……。
全体のデザインはACⅥをベースとしつつ、初代系やV系の退廃的な空気や、4系を彷彿とさせる高機動戦など、各シリーズのオマージュが多数盛りこまれている。短いながら中々に見ごたえのある作品だが、人体破壊描写がモロに描かれているので、グロ耐性のない人は注意。後、他のエピソードも粒揃いなので楽しんでね!
こぼれ話
- 創作グループ「AC部」の名前の由来は「アーマード・コア部」。当初は文字通り「ACを遊ぶための同好会」であった。現在も活動している安達亨は初代ACシリーズ公式大会の出場者&優勝者でもあり、ACMoAには彼の機体「ビッグ・ザ・将軍」が収録されている。
- ACⅥ発売に伴ってリニューアルされたオフィシャルサイトでは、各作品ごとの中二病全開のキャッチコピーが並ぶようになった。だが初代三部作のコピー文は、実は旧2ちゃんねるのAC板で有志が投稿した妄想コピーが元ネタである。その後、攻略wikiやファンサイト「RAVENWOOD(閉鎖)」などであたかも公式由来のように記載された挙句、遂にはフロム公式に逆輸入されてしまったようだ。
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