DDWFTTWとは、「追い風より速く風下に向かって走行する風力推進」を意味する言葉である。
概要
英語「Directly Downwind Faster Than the Wind」の頭文字を取ったもの。最初の「D」を省略して「Downwind Faster Than the Wind」の略「DWFTTW」や、「Downwind」からは「DW」ではなく「D」しか取らずに1番目の「W」を付けない「DDFTTW」で言及されることもある。
「追い風の風力で風下に走る車や船」はイメージしやすいと思う。帆を付けるか何かして、その風を帆で受ければ推進力が生じるから前に進むだろう。
しかし「追い風の風速より速く走る」という話になると、直感に反しているように思える。それはもはや「向かい風」を受けているに等しい。例えば上記のような「帆が付いた車や船」のような単純な構造では、追い風と同じ速度で走った時点で帆は風を受けなくなり推進力を得られなくなるため、それ以上スピードは出なくなるはずだ。
だが、単純な帆ではなく工学的な工夫によれば、これを達成できるはずだ、という考え方があった。例えば、Andrew B. Bauerという人物が1969年に「車輪と連動した空中プロペラを付けた車両」または「水中のプロペラと連動した空中のプロペラを付けた船」であれば「追い風より速く進む」事が可能だろうと結論付けたレポート『FASTER THAN THE WIND』(スヌーピーのイラスト付き)を発表した。
それから半世紀近く経った2005年、「Amateur Yacht Research Society」(アマチュア・ヨット研究協会)という団体の会誌内で、「追い風より速く進む機構」についての話題が盛り上がり、その中で「DWFTTW」や「DDWFTTW」と言った略称も使われるようになった。「そのようなことは不可能だ」という意見も根強かったらしい。
そして、アマチュア・ヨット研究協会の会員だったJack Goodman氏が会誌の2006年1月号に『Down wind faster than the wind』というタイトルの短い書簡を載せ、実際にそういったプロペラ付きの車両「DWFTTW」を制作したと主張した。走行している様子の動画もアマチュア・ヨット研究協会のサイト内で公開されたらしい。さらに同年12月には、アマチュア・ヨット研究協会のYouTubeチャンネルにもそういった車両が走行しているところの動画が投稿された。この時の動画タイトルは「DDFTTW」だった。
この動画はネット上で話題となり、科学者らやアマチュアの科学ファンらから「これは面白い、画期的だ」「いいや、こんなもの不可能でありインチキだ」と主張する人々の間で論争となり、軽い炎上のようになったらしい。
しかし結局のところインチキではなかったようで、理論的な検証もなされ、さらにGoogle社の後援の元に実証車両「Blackbird」も作成されて公開実験に成功した。
実験で成功しているわけだが、「追い風より速く走っている状況は「向かい風を受けている」に等しいのに、なぜ「風力で動いているのに追い風より速く走る」ようなことが可能なのだ?」という点が日常的な感覚とは乖離するために、どうにも納得できない/腑に落ちない人も多いらしい。
関連項目
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