スペイン、韓国、シンガポールなど「国会」を称する各国の議会については「議会」の記事を参照。
以下、日本国の国会(National Diet of Japan)について解説する。
国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。 |
日本国憲法第41条 |
以下の記述で単に憲法と言った場合は日本国憲法を指すものとする。
概要
日本国憲法に定められた日本国の三つの権力、三権のうち立法権を担当する政府機関である。
国権の最高機関とされているが、これは三権の中で唯一国民による選挙によって選ばれ「全国民を代表する(憲法第43条)」議員によって構成されているからであるとされている。ただし、最高機関であること自体には特別な法的効果はなく、あくまで国会の重要性を宣言しただけのものであるという政治的美称説が通説となっている。
主な権能
- 法律の制定
- 国の唯一の立法機関として法律を制定するという国会の最も重要な仕事の一つである。
- しかし、法律案の多くが内閣から提出されており形骸化を指摘する声もある。最近は議員立法も増えてきたが、議員立法が話題になること自体が議員から提出される法律案 の少なさを物語っているとも言える。
- 予算の議決・決算の審議
- 国の予算案は内閣が作成するが、その議決を行うのは国会である。国の予算は国家運営の基本であるから、国会において予算の議決を巡ってしばしば激しい争いが起きる。
- なお、会計年度当初までに予算が成立する見込みがない場合などには、政府は一定期間のみの暫定予算を組むことが出来る。暫定予算も不成立だった場合については現行法制度で想定されていない。
- 条約締結の承認
- 内閣が外国と締結した条約に対して事前又は事後に承認を行う。ただし、現在日本が締結している条約の多くは 批准を必要としないものであり、その場合は国会の承認は不要である。また、内閣が締結した条約を国会が否決したとしても、条約法に関するウィー ン条約第46条により対外的には原則として条約は有効とされる。
- 内閣総理大臣の指名
- 国会議員の中から内閣総理大臣を指名する。 通常は与党第一党の党首が指名される。国会で指名した内閣総理大臣は天皇により任命される。
- 憲法改正の発議
- 衆議院と参議院の両方で総議員の3分の2以上が賛成したとき憲法改正が発議される。これに加えて国民投票により過半数の賛成があれば憲法改正が実現する。今日まで一度も憲法改正が発議されたことはない。発議を巡って投票が行われたこともない。
- 内閣信任・不信任案の決議(衆議院のみ)
- 衆議院は内閣に対して信任・不信任の決議を行うことが出来る。内閣信任決議案が否決されるか内閣不信任決議案が可決されたときは内閣は10日以内に衆議院を解散するか総辞職しなければならない。
- 現行憲法下で内閣不信任決議案が可決されたのは4回のみ、内閣信任決議案が否決されたことは一度もない。内閣信任決議案は提出されること自体が珍しく今までに3回だけである。
- 国政調査権
- 国政全般に関する調査を行うため、承認の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
- 証人喚問や参考人招致等が有名であるが、他にも委員を派遣させて調査したり国会法第104条に基づいて記録を提出させたりする。なお、国会法104条に基づく記録の提出は近年ではまれであり、2010年に尖閣諸島漁船衝突事件で海上保安庁が撮影したビデオテープを提出させたが、これは実に15年ぶりのことであった。
- 弾劾裁判所の設置
- 裁判官を罷免、つまり辞めさせるかどうかを争う裁判所を設置することができる。これは、通常の司法手続きにより裁判官の罷免を争うと公正な裁判が保証できないから等の理由による。今までに8人の裁判官について争われ、そのうち6人が罷免されている。
衆議院と参議院
国会は「衆議院及び参議院の両議院(憲法第42条)」で構成されている。両議院の主な違いと共通点を表にまとめた。
衆議院 | 参議院 | |
---|---|---|
定員 | 465人 (小選挙区289人 比例代表176人) |
248人 (選挙区148人 比例代表100人) |
任期 | 4年 | 6年(3年ごとに半数改選) |
選挙権 | 18歳以上 | |
被選挙権 | 25歳以上 | 30歳以上 |
選挙区 | 全国を289区に分けた小選挙区と 地方ごと11区に分けた比例代表 |
45区の選挙区と 全国1区の比例代表 |
選挙の名称(通常) | 総選挙 | 通常選挙 |
解散 | あり | なし |
内閣不信任 | あり | なし |
その他 | 衆議院の優越あり・議員は代議士とも言われる | 緊急集会あり・開会式あり |
衆議院のほうが任期が短く解散もあるため衆議院の優越が認められている。主な事項は次のとおり。
- 法律の制定
- 法律の制定には原則として両議院の可決が必要であるが、衆議院が可決した法案を参議院が否決しても、衆議院が出席議員の3分の2以上の賛成で再可決すると法律案が制定する。 また、参議院が衆議院で可決された法律案を受け取ってから60日以内に議決しないときには、衆議院は参議院で法律案が否決されたとみなすことができる。なお、衆議院は両院協議会を開いて参議院との意見調整をすることもできる。
- 予算の議決・条約の締結
- 予算案について衆議院と参議院が異なる議決をしたときには両院協議会を開かなければならないが、両院協議会でも意見が一致しないとき、あるいは参議院が衆議院で可決された予算案を受け取ってから30日以内に参議院が議決を行わないときは衆議院の議決が国会の議決となる。条約の締結についても同様の規定がある。なお、予算案についてはこれに加えて衆議院で先に提出しなければならないという規定もある。
- 内閣総理大臣の指名
- 衆議院と参議院が異なる者を内閣総理大臣を指名ししたときには両院協議会を開かなければならないが、両院協議会でも意見が一致しないとき、あるいは衆議院が内閣総理大臣を指名してから国会休会期間を除き10日以内に参議院が指名を行わないときは衆議院の指名した者が内閣総理大臣となる。
- 内閣信任・不信任案の決議
- 既に述べたとおり衆議院のみが可能である。
- 法律上の規定
- 上記の憲法上の規定の他に法律で衆議院の優越が規定されているものがある。たとえば国会法第13条で、臨時会及び特別会の会期の議決や国会の会期延長の議決について両議院の議院が一致しない場合や参議院が議決しない場合には衆議院の議決が国会の議決となる。
- なお、かつては政府の審議会や公的機関の委員に対して国会の証人が必要な場合(国会同意人事)に衆議院の議決が認められた場合があったが、現在は廃止されている。
会期
国会が開かれ活動している期間を会期といい、常会、臨時会、特別会の3種類がある。この他に厳密には会期ではないが参議院の緊急集会というものがある。
- 常会
- 一般には通常国会という名前で知られている。
- 毎年1回1月中に召集される。以前は12月に召集されていたが、正月期間中に休会状態になってしまうため、これを防ぐために現在の形になった。
- 会期は150日間であるが、1回まで延長が可能である。ただし、衆議院が解散した場合と議員が任期満了になる場合には(両議院とも)閉会となる。1966年12月27日に開かれた第54回国会は召集日に佐藤内閣が衆議院を解散したため会期はわずか1日であった。これは、国会開会前に起きた黒い霧事件による政局の打開のためで黒い霧解散と言われている。
- 途中での閉会がなければ6月に閉会することになり、それまで予算案や関連する法案等の重要な案件について議事が行われる。会期の冒頭には内閣総理大臣の施政方針演説等が行われるのが慣例となっている。ただし、法的な規定はないので施政方針演説が行われなかったこともある。
- 臨時会
- 一般には臨時国会という名前で知られている。
- 内閣が必要と認める時に召集される。ただし、どちらかの議院の総議員の4分の1以上の要求があったとき、衆議院議員の任期満了に伴う総選挙があったとき、参議院議員の通常選挙があったとき、内閣は臨時会を招集しなければならない。召集までの期限は総選挙及び通常選挙の場合は選挙があった日から30日以内であるが、要求があった場合には特に規定はない。いずれの場合でも召集までに常会がある場合は臨時会は召集しなくてもよい。
- 会期は両議院の議決により決定され、延長は2回まで可能である。両議院の議決が異なった場合等には衆議院の優越が適用される。
- 特別会
- 一般には特別国会という名前で知られている。
- 衆議院が解散され総選挙が行われたとき、総選挙の日から30日以内に召集される。会期が常会と重なるときは常会とあわせて召集することも可能であるが、実際に行われたことはなく、特別会の会期を常会の会期と同一にして常会の代わりとするのが通例である。
- 会期については臨時会と同様である。
- 参議院の緊急集会
- 衆議院が解散されると特別会が開かれるまでは国会は閉会される。しかし、この閉会中に国に緊急の必要がある場合には内閣が参議院の緊急集会を求めることができる。参議院が自主的に招集することはできない。
- 内閣が緊急集会を求めるときは集会の期日と案件を示して行われ、期限は決まっていない。緊急の案件が全て議決されると終了する。延長もない。当初に示された案件に関連するもの以外は議案を発議することはできない。
- 緊急集会は本来国会が行うべき機能を参議院のみに代行させるものであるため、緊急集会で承認された議案でも次の国会で開会後10日以内に衆議院の同意がない場合には効力を失う。
- 参議院の緊急集会が開かれたのは2回だけであり、そのどちらでも全ての議案が承認され、後に衆議院で同意されている。
その他
- ニコニコ動画において「国会」タグが使われている動画は国会中継動画が多い。「国会中継リンク」というタグも存在する。また、ニコニコ生放送でも2010年から国会中継に参入。元々NHKが法令により、通常の番組より優先して放送しているものであるが、NHKは原則として、首相及び全閣僚が出席する、施政方針演説・代表質問・予算委員会集中審議・決算委員会・重要法案集中審議・衆議院解散・内閣総理大臣指名選挙・内閣不信任決議に限られているが、ニコ生ではこれらは勿論、NHKがカバーしきれていない各種委員会も全てカバーしており、本会議でも法案成立の瞬間に立ち会える事が出来るのも、ニコ生ならではの特徴である。また公職選挙法等の理由によりタイムシフトも無期限で残されており、結果的にいつでも審議の内容を確認出来る。
- 衆議院の優越により多くの場合で衆議院が優先されているが、国会の開会式は必ず参議院で行われる。これは参議院が帝国議会時代に貴族院が開かれていた議場を使用しており、天皇陛下をお迎えする設備が整っているからである。
- 日本国の唯一の国立図書館である国会図書館はその名のとおり国会に属する機関である。国会図書館には納本制度があり、国内で発行されたすべての出版物は国会図書館に納入することが義務付けられている。自費出版や同人誌についても除外する規定はないため、対象になると考えられている。ただし、実際には自費出版や同人誌はもちろん、通常の出版手続きにより流通する本であっても納入されていないものも少なくない。納入しない場合の罰則も存在するが適用されたことはない。
関連動画
関連項目
外部リンク
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