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アビガン®(Avigan®)とは、富士フィルム富山化学株式会社が開発した抗インフルエンザウイルス薬である。一般名はファビピラビル(Favipiravir)。
概要
2014年3月に、日本でインフルエンザウイルス感染症の治療薬として承認された。ただ、既存の抗インフルエンザ薬とは異なる作用メカニズムを持っていることや、動物実験の結果から催奇形性リスクも懸念されることから、「既存の抗インフルエンザ薬に耐性を有し、かつ高病原性のインフルエンザ感染症のまん延に備える医薬品」と位置づけられ、厚生労働大臣の要請が無い限りは製造などは行われない。
ファビピラビルの物質特許は2019年に失効しており、現在は製造特許だけが有効である。[1]
特徴
タミフルなどの既存の抗インフルエンザ薬は、ウイルスのRNA合成は許すが、その後のステップでウイルスの感染細胞からの広がりを阻害する。しかし、遺伝子の複製では一定の確率で変異が生じるため、薬剤耐性ウイルスの出現は避けがたい。一方、ファビピラビルはウイルスのRNA合成そのものを阻止するので、原理的に耐性ウイルスは発生しないとされる。[2]
動物実験によって初期胚の致死および催奇形性が認められているので、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与は不可。投与期間中および投与終了後7日間は、女性だけでなくパートナーの男性も有効な避妊の実施を徹底することが注意喚起されている。[3]
エボラ出血熱
エボラ出血熱、もしくはラッサ熱といった「RNAウイルス」への効果が期待されている。また、口蹄疫やノロウイルス、黄熱対策にも効果があると言われ、エボラ出血熱に対する治療薬としては希少であり、大量生産が可能な唯一の薬剤である。各国政府関係者や研究者、マスコミからは、『世界初のエボラ治療薬となるのではないか』と期待される声も挙がっており、『世界』の関心は高い。
基本的にこの薬剤は日本国内でのみ手に入ることができる。また、国内において約2万人分(原薬としてさらに約30万人分)の在庫を保有しており、WHOからの要請があれば供給可能である。
現在までに欧州4カ国でこの薬剤を投与された4人全員が回復したという実績があり、本格的にエボラ出血熱に対する治療薬として確立されつつある(因果関係はいまいち証明されてないようだが)。
日本国内では厚生労働省が2014年10月末に専門家による会議を開き、医師の指導の下で薬剤を使用できるとの見解で一致し、国内での使用も認めた。[4]
2014年11月、フランス、ギニア両政府はギニアの患者約80人を対象にアビガンの治験を開始した。この治験にはWHOも関与しており、国際的な承認に向けて前進中である。また、米政府も多額の追加助成金(約3800万ドルが追加され、計約1億8000万ドル)を米企業メディベクターに出して、米マサチューセッツ州とアフリカで、アビガンのエボラ出血熱へのフェーズ2試験(フェーズ1よりも一層多くの患者の免疫反応、安全性を調べて治癒傾向を判定する試験)を開始する予定である。
2015年1月、富士フイルム側は中国企業がアビガンの模造薬を製造したとして、明確な特許侵害であることを理由に提訴を検討しているという。
2015年2月上旬、フランス、ギニア両政府がギニアの患者約80人を対象にアビガンの治験を開始して以降、新たな進展がみられた。富士フイルム側に『有望な成果が得られている』とフランス国立保健医療研究所(治験をしている研究所)から報告があり、死者の減少、治癒されていくケースが増加傾向にあるとのこと。国際承認に向けて大きく前進した。
2月24日、フランス国立保健医療研究所による治験の中間結果が発表された。簡潔に要約すると以下の通り。
- エボラウイルス値が中~高値(血液1mL中のウイルスコピー数が108以下)の患者において、一般の栄養療法(基礎療法)と比較して、死亡率が30%だったのが15%に半減した。
- エボラウイルス値が非常に高値(血液1mL中のウイルスコピー数が108以上)な患者の約8割に強い腎機能障害がみられ、服用させても直接的な成果は得られず、死亡率の減少にはほとんど繋がらなかった。
- インフルエンザの治療と比較して10日間多量に服用させたが、有害事象(副作用)はみられなかった。
2019年の時点でもZmapp、Remdesivir、REGN、mAb114と共にFavipiravir(アビガン)は治療薬として使用されているが、いずれも科学的に治療効果が証明されたわけではなく、承認された治療薬はない。[5]
新型コロナ
新型コロナ治療薬としての承認を目指し国内で臨床試験を実施していたが有意な結果が出ず、富士フイルムと富士フイルム富山化学は2022年10月に新型コロナウイルス感染症を対象とした開発を中止すると発表している。[6]
関連動画
関連商品
関連リンク
報道記事
- 富士フイルムのアビガン、エボラ熱対策で約20カ国が関心=会長
- エボラ出血熱に対する「アビガン錠」の臨床試験で有効性が示唆、2月25日(現地)発表予定/富士フィルム
- 日本のインフル治療薬、「エボラ熱治療に有望」 仏研究所
- 中国企業が「アビガン模造薬」生産か 富士フイルム、特許侵害なら提訴の構え
- 米政府もアビガン治験開始 国防総省から巨額助成金
- エボラ治療薬への期待—富山化学が開発のアビガン錠
関連項目
脚注
- *富士フイルム、新型コロナに対する「アビガン」の治験の詳細が明らかに 2020.4.2
- *緊急寄稿(3)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含むウイルス感染症と抗ウイルス薬の作用の特徴(白木公康) 2020.4.4
- *アビガン錠200mg 2019年4月改訂(第7版)
- *エボラ熱、日本で未承認薬使用認める 厚労省専門家会議 2014.10.24
- *エボラ出血熱とは(2019年03月27日改訂)
- *アビガン、新型コロナ感染症対象の開発を中止=富士フイルム 2022.10.14
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