ボイパロイドとは、ボイスロイドをはじめとした合成音声が、アカペラ・コーラス等を歌う作品である。
概要
タグ利用者の思考の共通部分を取り出すと、大体こんな感じになると思われる。
かつては「ボイスロイドによるアカペラ」という説明で事足りたが、近年は事情が変化してきており、実は「アカペラ」という分類が適切かどうかも疑わしい。詳細は以下に記す。
詳細
注意
本記事では各所で動画等の資料を引用しているが、資料の解釈や議論は殆どが編集者の私見に基づく。
また、本記事の内容はボイパロイドを明確に定義したり、動画が定義に当てはまるか検証したりすることを目的としたものではない。
記事中で「ボイパロイド動画」などと表現した場合でも、「ボイパロイドタグのついた動画/タグロック動画」あるいは「たぶんみんなこれはボイパロイドだと思ってくれると思う動画」以上の意味を持たない。
タグロックを強調するのは、歴史を探るにあたって、投稿者側がボイパロイドであることを明確にしているかどうかは重要であると考えられるからである。
序論
「ボイパロイド」タグが初めて用いられた動画は、ゲスむらさきりん氏によるフタゴチャン(sm30225924)と考えられる。タグは投稿一時間後には付けられており、5日後にはタグロックされている(ニコログより)。
氏は同時期に明確に「ボイパロイド」の語を用いて布教する旨の発言をしており(投稿前後のTwitter)、再生やマイリス数、前後の動画投稿状況などを総合的に鑑みれば、この動画こそが現在の「ボイパロイド」文化の発祥と言って相違ない(先のリンクから分かる通り、単語自体の初出というわけではない)。
そこで今回は、この動画からジャンル上の特徴をいくつか挙げ、各項目ごとに他の動画での傾向などについて詳しく見ていく。
この動画は実況動画のおまけという立ち位置で製作されている。
本編も素晴らしい調声の名作なので、見よう。
ゲーム音楽・インスト
「ゲーム音楽」がボイパロイドの定義にまで含まれると考える人はまずいないだろう。
とはいえ傾向としては、フタゴチャン直後から現在まで、ボイパロイド動画のほとんどはゲーム音楽である。
これはフタゴチャンの影響もさることながら、単に(読み上げソフトと関連して実況動画等とも縁の深い)投稿者達にとっての印象深いインスト曲がほぼゲーム音楽だったという可能性も考えられる。
「インスト」はゲーム音楽に付随する傾向だが、もちろん完全に一致するわけではない。
ボーカルパートのある曲でも、オケ部分まで合わせて歌っていればボイパロイドとみなされる、と言っていいだろう。
ゲーム音楽・インストでないタグロック動画はsm32471381が初であり、直後にはsm32499533が上がっている。
投稿者空星氏は、昨年にはアカペラ合唱動画を上げている。→sm30283401
(後半は)初のオリジナル曲でもある。
また、他の例として、海鮮市場や柴又等の音MADカバーが盛んな曲の存在も見逃せない。
特に、sm29329787はフタゴチャン以前の動画であり、独立した需要の存在が伺える。
タグロック動画は少なく、ボイパロイド投稿祭中のsm38904146が初である。
ゲーム音楽・インストと合わせて考えても、自分の好きな音楽を自分の好きな音で表現しようという音MAD文化(の一部)との類似性が見て取れる。
アカペラ
一見定義として妥当に思えるが、実はそうとは言い切れない面がある。
実情としては、「楽器の音を声で歌ったもの」というのが近いだろう※1。
実際、「アカペラでないボイパロイド動画」も存在する。
タグロック動画としてはsm34902137が初であり、他に初期の動画としてはsm30618009、sm31786050などが挙げられる。
これらはインストの声によるカバーという点でも共通しており、伴奏が必ずしもボイパロイドのアイデンティティを損ねるものではないことが分かる。
原曲あり。
前半原曲あり、後半原曲なしの構成。
茜ちゃんをひたすら称えるスキャットも印象的。
一方で、アカペラを定義とするならば、例えば「歌唱曲の伴奏なしでの独唱」もボイパロイドになる※2。
では先ほどの「楽器の音を声で歌ったもの」なら明確な定義になるかと言うと、そうとも言い切れない。
というのも、境界線が曖昧なのである。要は「声をどこまで楽器的に使うか」の問題であり、境界線の周辺には、
など様々なスタイルがある。
結局のところ、ジャンルというものが大抵そうであるように、最終的には個々人の判断や全体的な傾向を見るしかない。
※1…「ボイパ=ボイスパーカッション」という言葉が想起させるイメージも、この傾向を補強していると考えられる(パーカッションに限らないが)。
※2…「そもそも声は楽器だろう」という立場に立てば、歌唱曲もボイパロイドである。
ボイスロイド
ボイスロイド以外を使用した/ボイスロイドを使用していない動画をボイパロイドとしてよいかについては、これまであまり議論されていないが、次のような観点が参考になると思われる。
- 界隈内で「ボイパロイド」という言葉が「ボイスロイド+ボイパ」として認識されているのは確かである。
実際、前項までで紹介した動画は(意図的に初期のものを選んできたとはいえ)全て、ボイスロイドのみによる動画だった。誕生からしばらくはタグの動画のほとんどがボイスロイドによるものであり、他ソフト等を使用したものは後発と言っていい。 - 一方で、「ボイスロイド」という言葉はは読み上げソフトの代表としても扱われがちである。
ボイスロイドと一括りにされがちなソフトとして、声質もといエンジンの同じAITalk系、読み上げソフト界隈に同居するCeVIO(こちらはソングボイスが用いられることもある)がある。
さらには音楽系ジャンルゆえ歌声合成ソフトも参入しやすく、実況等と同様、複数種ソフトの共演(+exVOICE等追加音源)も多い(同キャラクターの読み上げ音声+歌声などもみられる)。
将来の新たなソフトの扱いなども考えれば、分類はますます難しくなると考えられる。
(VOICEROID・CeVIO・AITalk系動画タグ問題などを参照)
よって、それが「ボイパロイド」であるかは別としても、統合タグや呼称の需要は確かである。 - ボイパロイドには、ボイスロイドというだけでなく、上述のゲーム音楽の多さなど独自の文化・傾向がある。
- ボイパロイドという名称は、「歌う(ソフト名)」や他の「(ソフト名)+(ジャンル)」のような命名規則に対する例外である。他ソフトには「全部(ソフト名)」あるいは「(ソフト名)アカペラ曲」というタグが存在し、ボイスロイドにも適用して住み分けタグとする選択が考えられる。
なお、「全部ボイロ」あるいは「全部ボイスロイド」は動画タイトルとしての使用例があるが、タグは編集時点で存在しない。(類似タグとしてボイロ音MADがある。) - 「ボイパロイド」という単語は「ボーカロイド+ボイパ」とみることもできる(なんなら「アンドロイド+ボイパ」でも成立する)。
実際、使用例が存在する。「ボーカロイド」が「ボイスロイド」以上に「音声合成ソフト」全般として扱われがちな言葉であることを考えれば、「ボイパロイド」を「合成音声+ボイパ」と解釈することの妥当性は否定できない。 - 2021年6月開催のボイパロイド投稿祭は、「音声合成+アカペラ」がレギュレーションとされた。
ボイスロイド以外では「ボイパロイド投稿祭」タグのみ付けて「ボイパロイド」タグは避けた動画も多かったものの、一般に対する「ボイパロイド」=「音声合成+アカペラ」のイメージは強まった可能性がある。 - ジャンルの規模を考えれば結論を急ぐことではない
各ソフトについて
ところで、合成音声でアカペラを歌ったりインスト曲を演奏する試み自体は、当然ながらボイパロイドが初というわけではない。ここで、各種合成音声による活動の傾向を見ていこう。
ボイパロイドタグのない動画も取り上げるので注意。
VOICEROID
まずはボイパロイド以前のボイスロイドについて。
なお他AITalk系は省略する。
ボイスロイドに歌を歌わせる動画(歌うボイスロイド)自体は月読アイ・月読ショウタ登場(2009年12月4日発売)時からあった。
とはいえ当時はまだ数が少なく、ピヨ式調声法(紹介動画: 2015年8月23日)やKotonoSync(紹介動画: 2016年08月28日)の登場に伴って増加してきた。
中にはアカペラや、インストのメロディーを歌ったものなどもいくつかあったが、複数パートとなると極めて少ない。
上述のsm29329787以前には、sm27286169、sm28797599が、確認できたほぼ全てであった。
(強いて言うなら、にくじゃが教(単語記事参照)もある種ボイパロイドと言えるかもしれない。)
やはり「ボイパロイド」の誕生による影響は大きかったと言える。
VOCALOID
アカペラにはVOCALOIDアカペラ曲のタグが使われる。
各キャラ単体の場合、全部○○のタグも使われる。
初音ミク登場(2007年8月31日発売)時から数多く上がっており、インストやゲーム音楽も多い。
ボイパを含むものとまでなると少なくなるが、2007年内だけでもsm1092077やsm1283143がみられる。
UTAU
タグは全部UTAUが使われており、2008年末ごろからみられる。
また、UTAU発とされるタグとして声は楽器シリーズがある。発祥のsm5258472などは、より声の特徴を抑えて楽器らしさを強めている。
CeVIO
全部CeVIOタグが使われる。
2017年末ごろからは、ボイスロイドと同じくゲーム音楽中心に増えてきている。
タグロック動画としては、VOICEROIDとの共演のsm36668022が初。全部CeVIOではsm38281425。
ちなみに、語感の良さからか、さとうささらのスキャットに「ささら」「さとう」「さらさら」などがよく用いられる。
この動画はボイロメインでCeVIO(ささら・つづみ)はパーカッションの一部のみ。
投稿者ちょこいか氏の作品は全体的に音MADリスペクト要素が強い。
NEUTRINO
NEUTRINO自体が先に「AIシンガーきりたん」として浸透した事情もあって表記揺れがみられるが、NEUTRINOアカペラの単語記事によくまとまっている。
タグロック動画として、sm36570759、sm38914950がある。
NEUTRINO新世代のめろう・ナクモに加え、ボイパ部はボイロきりたんという構成。
Synthesizer V
ボイロキャラの別ソフトとして注目されたという点ではNEUTRINOと近い立場にある。
アカペラ等のタグは作られていないようだ。
初タグロックはsm38606005、単体ではsm38855593。
CoeFont Studio
新しい読み上げ音声で調声の自由度も比較的低いながら、既に「歌うCoeFont」タグなどに歌が投稿されている。
exVOICE
合成音声ではないため、性質としてはより音MADに近いと言える。
近年はsm34281366など、exVOICEを合いの手やパーカッションパートに用いたものも多い。
(これらのパートに通常の読み上げ音声を用いるケースもある。)
なお、紲星あかりexVOICEのポテンシャルを世に知らしめたアカリがやってきたぞっの動画投稿は2018年9月22日、収録アルバム発行は2018年8月10日である。
その他ソフト
ソフトの分だけ文化がある…とはいえ、あまりに知られていないと音声合成マニアみたいな人にしか拾われていなかったりもする。
しかし知名度でポテンシャルが決まるわけでもない。
また、上述のように新しいソフトも増えつつある。
音声合成の単語記事にソフト一覧がある(網羅できているとは言えないが)ので、興味があれば調べてみよう。
その他
以下は、ボイパロイドの「定義」を問うようなものではない、作品によって様々な違いがみられる項目である。
映像
出演キャラを(パートの分だけ)並べて合唱しているように見せているものが多い。
また、ゲーム音楽の場合、ゲーム画面を載せたり、ゲーム画面を出演キャラ等でオマージュした映像を制作するケースがみられる。
ゲーム画面やその再現に合わせて、ゲームの効果音(代わりのフレーズ)を盛り込むことも。
当然ながら制限はないので例外はいくらでもあり、作品ごとの個性が明確に表れる要素である。
スキャット
元とするアカペラ譜が無い場合、どの程度工夫するかは作品次第である。
上述のささらさんのように、キャラ名等をさりげなく盛り込んだり、独自の歌詞を付けているケースもある。
パーカッション
上述したexVOICE等を用いるケースの他に、パーカッションパートは省略するケース、音声を編集してパーカッションに近い音を制作するケースなどがある。
関連動画
関連リンク
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 7
- 0pt